最近は空中ディスプレイを用いたコンテンツの展示が増え、色々な場所でSF映画に出てくる空中操作のシーンを実際に体験できるようになりました。
しかし、その製品は工学的に非常に多くのスペースが必要で、なかなか小型で薄い製品が世に出てこないのも事実です。
なので今回はASKA3Dと光を偏向させるプリズムシートを利用して作ってみました。
空中ディスプレイが実現する体験価値は、とてもすばらしい可能性を秘めている素敵な技術です。
それを実現するための機構には、まだまだ様々な課題があります。
業務用として利用するにはさらに改良が必要にはなりますが、「個人レベルではここまで薄型の筐体に出来るよ」という事例を本記事で解説していきたいと思います。
- 空中ディスプレイの構造が分かる
- 空中ディスプレイの部材紹介
- 薄型筐体の製作工程
空中ディスプレイの基本構造
空中ディスプレイを実現化する製品を提供している有名な国内企業は3社程あります。
製品を販売している国内の会社
- 株式会社アスカネットの「ASKA3D」
- 日本カーバイド工業株式会社の「空中ディスプレイ用の再帰反射シート」
- 株式会社パリティ・イノベーションズの「パリティミラー」
それぞれ、空中に映像として表示する光を結像する機構や構造は別の物になってはいるのですが、ユーザーとして体験できる表現は一緒です。
空中結像の原理
ディスプレイなどから発生する光を様々な構造で反射をさせて光を結像させています。
それぞれの結像の原理は、製品を販売している会社で詳しく説明されているのでそちらご覧いただくと、様々な手法で実現されていることがわかります。
- 株式会社アスカネット:エアリアルイメージング事業 ASKA3D特設サイト
- 日本カーバイド工業株式会社 : 空中ディスプレイ用リフレクター
- 株式会社パリティ・イノベーションズ : 技術紹介サイト
空中結像するには広い空間が必要
空中ディスプレイは基本的に構造上、筐体内に広い空間を必要とします。
これまで体験をされた方はわかると思いますが、全てが大きな筐体の中で設置されています。
参考動画:ASKA3Dを組み込んだ空中ディスプレイの小型デモ機|ユニコチャンネル®(YouTube)
薄型空中ディスプレイを作る
空中ディスプレイは、自作で作成することが可能です。
難しい部分としては、空中ディスプレイを実現するための光学部品が、法人や教育機関などでないと購入できないところでしょうか。
この辺りについては、微力ながらASKA3Dを複数枚所有して、今後も少しずつ枚数を増やしていき、無料で貸し出していきます。
現在はASKA3D 樹脂版 200mm角が2枚の状況で、2020年3月末まで2枚とも貸し出している状況です。
2021年もASKA3Dを買い足していく予定なので、どうしてもASKA3Dの購入が困難な場合はご相談ください。
空中ディスプレイの部材を紹介
私が所有しているものはアスカネット社の「ASKA3D」の樹脂素材で製造された200mmx200mm角の製品になります。
- 空中結像プレート
- 高輝度のディスプレイ
- 空中操作するための赤外線センサーなど
- パソコンやSTB
- 部材を格納する筐体
の5つがあれば空中ディスプレイ製品を工作することが可能です。
本当は、LITEMAX社制の超高輝度ディスプレイを使用したいのですが、記事の一番上にあるYouTubeの動画では、iPhone7を使用しています。
上記の部材とも被るのですが、空中ディスプレイコンテンツ投影環境を整えるための参考機材などの情報を紹介します。
空中ディスプレイ化を実現する『ASKA3D』
ASKA3Dは、2021年02月23日現在では、販売代理店制度は行っていないのでアスカネット社からしか購入できません。
例えば、筆者(法人)がアスカネットからASKA3Dを購入して、別の会社に販売することも可能ですが、価格が高くなるだけです。
空中に映像を投影するための高輝度ディスプレイ
HDMIインタフェースでもUSBのType-A、Type-Cでも、13.3inchのモバイルモニター(できれば高輝度)で、コンテンツ制御の中心になるPCと繋がれば問題ないです。
なるべく高輝度のディスプレイを選びましょう。
空中ディスプレイの映像に触れるための赤外線センサー
参考商品:PC パソコンがタブレットやスマホのようにタッチパネルに スマートタッチパネル変換デバイス Airbar エアバー 14インチ
LEAP MOTIONなどのセンサーも利用可能ですが、そうするとコンテンツの奥行き情報を制御する必要が出てきたり、利用環境がUnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンを実装する必要があるので、まず簡単に始めるのであれば、AirBarをおすすめします。
空中ディスプレイのコンテンツを制御するPC
先ほど紹介している高輝度ディスプレイのほとんどがType-C対応なのでこのPCです。
高輝度ディスプレイがHDMIインターフェイスの物を選んだ場合は、それに合わせてHDMI-OUTが付いているノートPCを利用しましょう。
また、始めから手作り筐体を作る感じであれば、Intel Compute Stick スティック型コンピューター Intel Core m3-6Y30搭載モデル BOXSTK2M3W64CCを、最初から利用するのも有りです。
この場合、追加でBluetoothキーボードが必要になるのでご注意ください。
STBで運用する場合は、BrightSign製のSTBが1番です。
筆者はかなりの種類のSTBで検証しましたが、BrightSign製はまず不具合が起きません。
参考商品:BrightSign BS/XT1144 4Kデジタルサイネージプレーヤー BrightSign XT1144
STBの中ではダントツに高いのですが、イベント開催前や、開催中の不具合に巻き込まれることを考えると総合的に安くなります。
薄型筐体の工作
筐体制作ということですが、当社には工作機械がある環境ではないのでホームセンターで買える工作部材を買ってきました。
工作部材を揃える
- スチレンボード
- カッター
- カッターマット
- 接着剤
- 筆記類
どれも小学校などの図工で扱うような工具ですが、試作筐体なのでこれで作成していきます。
寸法などは「ASKA3D」から測ってしまえばいいのでそれほど難しいものではないです。
薄型化にはプリズムシートが必要
本当はディスプレイに対してASKA3Dを並行に置いてあげたいのですが、今回制作する筐体に角度がついて三角になってしまっているのは、現在使用している「プリズムシート」の都合です。
超薄型を作るためには、理想の偏光角度になっている部材が欲しいのですが、これがなかなか1枚だけの単品購入だと大変高価なものになってしまうのでパッと購入するにはちょっと気が引けてしまいます。
薄型筐体完成
「ASKA3D」だけを支える構造になっていればいいので、試行錯誤はありながらもこのように筐体が出来上がりました。
いよいよ結像して投影
今回はプリズムシートが小さいのでスマホを筐体の中に入れてから、「ASKA3D」を上に乗せて投影した動画を撮影しました。
以前に比べて空中ディスプレイを可能にするプレートやシートはだいぶ価格が下がったので、実験にかかる費用もかなり下がっています。1枚だけだとプリズムシートの方が高いかも。
他にも筐体を薄型化して空中ディスプレイを制作する方法はありますので、是非皆さんもチャレンジすると面白いです。
空中ディスプレイに関する情報は、こちらの記事でもまとめてあります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
- ASKA3Dは、株式会社アスカネットの商標です。
- パリティミラーは、株式会社パリティ・イノベーションズの商標です。