少し前までプロジェクションマッピングは、単に壁や物体に向けて強い光を照射して演出するだけの物でした。
しかし、最近はモーションセンサーを含むトラッキング技術が使いやすくなってきたことにくわえて、その機能を実装することが容易になりました。
そのような周辺技術の利用も進み、プロジェクションマッピングは、インタラクティブに美しい表現をすることが簡単にできるようになっています。
本記事では、有名なプロジェクションマッピング演出をしている企業の紹介や、簡単な検証環境を安く構築する方法を紹介していきます。
まだまだ伸びていくプロジェクションマッピング市場
みなさんがご存知の通り、最近はプロジェクターを使用した体験型コンテンツが至る所に設営されるようになりました。
大規模な演出が設営され、様々な場所で来場者を楽しませるイベントが各地で増えています。
映像制作会社やイベント運営会社だけでなく、以前は見向きもしなかった様々な業界もこの流れに乗る形になり、様々な表現方法を実験して、自分たちの独自の広告サービス価値を生み出すために日々チャレンジをしています。
プロジェクションマッピング技術を利用したイベントやコンテンツ開発は、需要に対してまだまだサービス提供できる会社が少ないのが実情です。
このセグメントには事業成長のチャンスがものすごくある分野でもあります。
ハイレベルなプロジェクションマッピングを展開している会社
これらの技術を用いた最先端の演出をしている会社を2社ほど紹介させていただきます。
teamLab
FUTURE WORLD: WHERE ART MEETS SCIENCE, ArtScience Museum|teamLab(YouTube)
とても素敵なインタラクティブプロジェクションマッピングの演出でユーザーを楽しませてくれる演出をしている会社です。
各地で行われるイベントにはほぼ出向いて体験してきましたが、いつもあっという間に一日が終わってしまうほど楽しませてもらっています。
Rhizomatiks
ARTECHOUSE – “Lucid Motion” by Daito Manabe x Rhizomatiks Research|Rhizomatiks(YouTube)
こちらも物凄い演出技術で様々なアーティストやイベントなどのコラボでインタラクティブプロジェクションマッピングを展開している企業です。
ライゾマティクスの方とは、10年くらい前から何度かやりとりをさせていただいたことがありますが、持ち合わせている高い基礎技術にはいつも驚きと感動が多かったです。
リアルタイムインタラクティブとなると途端にハードルが上がる
プロジェクションマッピングは、ただ対象物に光を当てて演出するだけの構造なら、使用するソフトウェアはGrandVJやMadMapperを使用してコンテンツを制作していくだけなのでそれほど難しくないのです。
しかし、リアルタイムに何らかのユーザーのアクションに対して反応するようにしたり、ゲーム性を持たせたりとなると途端に難易度が上がります。
その理由は、インタラクティブな体験価値を高度に体験してもらおうとすると、先述したソフトウェアなどに加えて、Unityなどでゲームアプリ開発並みの負荷がかかってきます。
プロジェクションマッピングソフトウェア
プロジェクションマッピングで利用されるソフトウェアを5つ紹介します。
MadMapper
MadMapperは、大規模なイベントでよく使われる人気のマッピングソフトです。
GrandVJ
GrandVJもPCとプロジェクターだけで簡単に複数画面制御などができるマッピングソフトです。
Projection Canvas
こちらも様々なイベントで利用されているマッピングソフトウェアです。
個人向けには「BRIGHT JAM」というラインナップがあります。
Projection Canvas|日興通信株式会社
Millumin
After Effectsとの連携で好評なのが、Milluminです。
Resolume Avenue
Resolume AvenueはAvenue社のVJソフトウェアです。ライブビジュアルパフォーマンスに特化した機能構成になっています。上位のラインナップに「Arena」があります。
社内での検証環境構築は難しかった
以前は、この辺りの演出となると、Kinectを利用した物が多かったですが、現在では様々なモーションセンサーが発売され始めています。
実装方法やスペックの把握はけっこう煩雑で、このプロジェクションマッピング市場に参入するのを諦めてしまい、この部分を案件を受けたときにはやはり「今できる会社」に運営をお願いしてしまっているところも多いのではないでしょうか。
検証環境の構築
今回の記事では、難しいインタラクティブプロジェクションマッピングを手軽に構築することをゴールにしています。
実際の検証環境の構築イメージを書いていきます。
簡易的な検証環境の構築
新しい事業を確立させて適切な利益を得るためには、アウトソーシングから自社内でコアのノウハウを溜めていきつつ、各分野のプロと共創をしていくのが重要なポイントです。
まずは簡単な環境を整えつつも、見た感じは少し派手に見えるような簡単なインタラクティブプロジェクションマッピング構成を組んでみるのも面白いです。
- PC(WinでもMACでも。:USB3.0のインターフェイスとHDMIは必要)
- プロジェクター(理想はLGの超単焦点LG PH450UG以上ですが、とりあえずはピコプロでも)
- 赤外線式タッチフレーム(AMAZONで55inchの「55inch 10点マルチタッチ」あたりでOK)
上記のパターンはAmazonで買い揃えて10万円未満で構築可能です。
物品の準備ができて組み立てると下記の図のような構成図になるはずです。
(プロジェクタの投影位置とフレームがぴったり合わさるようにしてください。)
構築イメージ
ここまで準備ができてしまえばあとは超簡単です。
Webには無料で射的や金魚すくいなどのお祭り系ゲームなどフルブラウザで遊べる物がまだあるので、タッチフレームを使って遊んでみてください.
この方式だと、コンテンツはHTML5で作れるので、Unityなどで開発するよりは負担が軽くなります。
また、かなり無理矢理ですが、当ブログの1カラム内に、HTMLとJSでコーディングしたインタラクティブプロジェクションマッピング用の簡単なコンテンツを作成してみました。
コンテンツの企画をするときの検証時にお役に立てば幸いです。
実際に検証で遊んでみるときには、赤外線式タッチフレームに柔らかいボールを当てるなどして体験してみてください。
体験価値の向上はアイデア次第
この環境で提供したいサービスのイメージを掴み、HTMLベースで組める機能や体験を検証してもらうだけでも新しいサービス作りのきっかけになります。
おもちゃのクッションnerf(ボールタイプ)などがあればもっと面白い体験環境も作れます。
この辺りの演出は、ARやMRと技術を組み合わせると息の長い体験型コンテンツの構築が可能になります。
空中ディスプレイ技術と組み合わせるとさらなる体験価値向上もユーザーに提供することが可能になります。
空中ディスプレイについては、こちらの記事で紹介しています。
本記事が新規事業のきっかけになれば幸いです。
手軽に透過型プロジェクションマッピングを楽しむ
最近(2020年05月)は、いろいろなところで透明アクリル板やクリアシートを見かける様になりました。
プロジェクションマッピングでいろいろやっていた身としては、そういうのを見かけるとなんでもプロジェクターを当てたくなってしまいます。
インタラクティブなものを含めて、プロジェクションマッピングはお手軽に楽しめるものがたくさんあります。
透過系のプロジェクションマッピングは演出効果が高いので、簡単に紹介しておきます。
- 紗幕
- アクリルパネル
- 農ポリ
それでは、ひとつずつ解説していきます。
紗幕
最近は、紗幕とプロジェクターを組み合わせての演出が多くなってきており、リリックビデオの映像をライブ映像で紗幕に当ててライブ演出をするなど、多くの有名なアーティストが実演する音楽ライブや舞台演出などでも利用されています。
紗幕での実験は手軽に行いやすく、千円台で実験でできるのでいろいろ試してみると面白いです。
リリックビデオとは、歌詞や詩などのテキストや、そのテキストに装飾や様々なエフェクトを付加した映像演出が吹かされている映像コンテンツのことを指します。
アクリルパネル
プロジェクションマッピング用のアクリルパネルやパネル貼付用フィルムは、たくさんの企業から出ていますが、大変高価なものが多いです。
アイデアを試す段階の検証や、簡単な遊び向けのコンテンツ等で実験する場合は、最初は乳白色の下敷きとモバイルプロジェクターなどで十分に実験することが可能です。
農ポリ
農業用ポリエチレンシートでも、透過系のプロジェクションマッピング演出は気軽に環境構築が可能です。
参考リンク : ポリッドスクリーン
農ポリと簡単なフレームを組むだけで、あまり費用をかけずに子供が喜ぶおうち遊びも可能になります。
家でインタラクティブプロジェクションマッピング
下記の画像は、農ポリでインタラクティブプロジェクションマッピング環境を構築をした、エンタメ向けコンテンツを体験して遊んでいる筆者の次男の画像です。
プロジェクションマッピングとセンシング、半透過する反射媒体を使用することで、色々と遊べる体験コンテンツが作れます。
構築環境
- 農ポリ
- ホームセンターで売っているパイプと農業用タッカーで作成したフレーム
- できれば超単焦点プロジェクター
- PC(Unity環境をインストール)
- Leap Motion(上の画像のコンテンツは、LeapMotionのサンプルコンテンツです。)
農ポリと農業用タッカーフレーム
ポリッドスクリーンパーツリストのリンクはこちらです。
参考リンク : ポリッドスクリーン パーツリスト
上記のリンクに、推奨の農ポリシートも記載されています。
超単焦点プロジェクター
実際にイベントで使用した超単焦点プロジェクターを紹介します。
参考商品:LG PH450UG 超短焦点 バッテリー内蔵 LEDプロジェクター
スペックはそれほど高くないのですが、これでも充分に使えます。
予算があれば、理想のプロジェクターとしては下記のプロジェクターになります。
参考商品:LG HF85LS 超短焦点 レーザー光源プロジェクター
PC(Unity環境をインストール)
PCはWin、Macのどちらでも良いのですが、筆者の場合はWin環境で組み立てています。
また、STBの場合はBrightSignを利用しています。
参考商品:BrightSign(ブライトサン) HD1024 フルHD 拡張I/O HTML5プレーヤー
Leap Motion
センサーはLeap Motionなどが手軽に利用できます。
参考商品:【国内正規代理店品】 Leap Motion 小型モーションコントローラー 3Dモーション キャプチャー システム
この他にもKinectやneonodeなどのセンサーでも活用できます。
プロジェクションマッピングの照射範囲や、センサー精度によって使い分けてください。
最近は、PC本体に付属している内蔵カメラで、かなり精度の高いモーションキャプチャができるので、コンテンツアイデアによってはこの辺りのセンサー類はいらなくなる場合もあります。
小さい範囲であればAirbarが結構使える
大きい照射範囲で環境を作るのはなかなか手間がかかります。
小さい範囲であればLeapMotionとピコプロジェクターでも、子供たちが喜ぶようないろんなコンテンツを作ることが可能です。
参考商品:PC パソコンがタブレットやスマホのようにタッチパネルに スマートタッチパネル変換デバイス Airbar エアバー 14インチ
上から机などに向けて、13.3inch〜15.6inchのバーを、16:9アスペクトに合わせて、カラフルなパネルキーボードをプロジェクションマッピングしておき、Airbarを机などの端に据えておけば、何もなかった机の表面に楽器を作ることが可能になります。
プロジェクションマッピングを応用していく
イベントや催事で使われるプロジェクションマッピングコンテンツに合わせて、イベントでは空中ディスプレイによる体験コンテンツも併用されることが増えてきました。
プロジェクションマッピングは、昨今はよく設置されるようになったアクリル板に当てる事でそこにディスプレイを作ることも可能になります。
ついたてを設置する際は曇りタイプにして、後でプロジェクションマッピングを応用できるように設計をしておくのも有効です。
新しい技術をどんどん取り入れて、イベント業界を盛り上げていけたら良いですね。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。