映画館で映像作品が公開される場合に利用されるデジタルシネマパッケージ(DCP)ですが、Wikipedia(日本語)などにある情報からでは、どのソフトを利用してDCPマスタリングをすれば良いのか、判断するのが難しいところがあります。
そこで、本記事では無料で利用できるツールから、ポストプロダクションが利用する本格的な業務用のツールまでをご紹介します。
無償版から本格的なポストプロダクションツールを紹介
これまで、無償版のツールをメインに紹介してきましたが、本記事ではその中から有償版のDCPマスタリングアプリケーションまで含めて厳選した鉄板のツールを4つ紹介します。
- OpenDCP
- DCP-o-matic
- easyDCP
- CLIPSTER
それでは、ひとつずつ順に解説していきます。
OpenDCP
このソフトは有名です。
Web上でもよく紹介されているツールです。InteropにもSMPTE形式にも対応しています。
字幕も工夫をすれば焼き付けではなく各字幕を選択できるSubtitle領域をDVD/Blu-rayのように構成することも可能です。
JPEG2000へ変換する際の受付フォーマットがDPXとちょっと使い勝手が悪い部分もありますが、それでも無料でDCPを作れるツールのひとつとして貴重な存在です。
劇場のシネマサーバーへ問題なくインジェストもできます。
(別ソフトでデータの取り込みとデータ構造のバリデートをして検証済みです。)
OpenDCPは、充分に劇場上映が可能なDCPの作成を可能にしています。
OpenDCPでデジタルシネマパッケージを作る方法は、こちらの記事で紹介しています。
きちんとしたDCPの解像度や作り込みが出来ていれば、本編でも問題なくOpenDCPで納品が可能です.
予告編などについても簡単に作成することができます。
DCPにした後のプレビューがそのままではできないので、別途再生ソフトを用意する必要があります。
基本的にDCPの制作ツールとしてまったく問題がないツールですが、バリデートチェック機能がないので注意をする必要があります。
特に特殊なことができるわけでもないので、基本的には問題なくインジェストはできます。
DCP-o-matic
このソフトも個人、小規模プロダクションではおなじみのDCPツールです。
このツールは、DCPの運用で必要なほぼ全ての機能を保有しています。
使いこなせばKDM(Key Delivery Message)、字幕(SubTitle)、その他の様々なメタ情報管理も可能です。
DCP-o-maticについての操作の仕方は、また別記事で紹介予定です。
DCP-o-maticは、DCPプレイヤーも備わっているので、パッケージ後のQCまで含めて完結が可能です。
こちらのソフトは、シンプルなベリファイチェック機能がプレイヤーに備わっています。
easyDCP
僕の経験では、個人、中堅規模のポストプロダクションではこのソフトが一番運用しやすいと考えています。
DCPサービス事業を依頼された時、私たちがコンサルティングする際にはこのソフトの導入を推奨しています。
easyDCPは、全ての運用機能を備えたハイクオリティーな環境を数十万円レベルで導入可能です。
DCP制作サービスのスタートアップ段階では1番運用しやすいシステムになります。
非常にシンプルなUI、マニュアルもわかりやすく、KDM(Key Delivery Message)、字幕(SubTitle)も対応。
何より有用なのは、Validate checkが可能なことです。
劇場へのインジェスト前に完全な納品フォーマットチェックが可能なため、このソフトで運用すれば、DCPの制作サービスを安心して立ち上げることが可能です。
easyDCPの操作の仕方は別記事で作成していきます。
easyDCPの導入については、筆者がDCP事業立ち上げのコンサルティングを行っておりますので、お問い合わせいただければ対応します。
ただ、easyDCPはマニュアルやサポートがしっかりしていて、コミュニティーもあります。
DaVinci Resolveの出力用プラグインも提供されているので、制作オペレーションで困ることは、ほとんど起きないと考えています。
easyDCPのWebサイトはこちらになります。
選択のポイントとしては
- easyDCP Playerは必ず購入する
- KDMオプションは利用頻度と必要に応じて購入する
- DaVinci Resolveのプラグインにするか、単体ソフトで購入するか?
になります。個人的には、DaVinci Resolveプラグインを導入するか、或いはサブスクリプションで利用することも出来るので、最初はそちらを活用するのが良いと考えています。
よく、一緒に製作を進める中でエディターの方が変わったりすると、次の方が必ずしもDaVinci Resolveをメインに使用している方とは限らないことがあります。
そのための準備としてプロセスで業務を区切っておき、単体ソフトでのDCPマスタリングができる体制も押さえておいたほうがよいです。
また、easyDCPは価格ラインナップに、1ヵ月分だけの料金を支払うお得なライセンスなどもリリースされています。
多くのDCPマスタリング機能を備えたアプリケーションがサブスクリプションで使えるなんて、すごく素敵です。
このサービスを利用すれば、以前は何十万円もかかっていた導入費用が都度の費用でDCP制作環境が入手できます。
CLIPSTER
コチラは言わずもがな、DCP関連に関わっていれば誰もが知っている最高級のDCPマスタリングシステムです。
DCPに関する全ての機能を備えているこのシステムは、1ラインあればどんな細かい要求にも耐えられるシステムです。
導入費用はそれなりに高いですが、大手ポストプロダクションにほぼ導入されているシステムです。
導入さえできれば!安心してDCP事業を行うことが可能です。超高いですけど。
今は聞かなくなりましたが、当時は「ClipstarでDCPマスタリングをすること」と、DCP制作においてツールの指定まであったほどです。
結論としては「easyDCP」がおすすめ
現状、DCPマスタリングを可能にするアプリケーションやツールを全て列挙すると数十種類になりますが、結論として、DCPのマスタリングを行うなら、easyDCPがお薦めです。
バンドル版もあるので、使用している編集ソフトなどの書き出し時に、作業し終えたタイムラインから直にDCPマスタリング出来る環境も入手することができます。
また、最近ではIMFパッケージャーもリリースされたので注目です。
実際、筆者自身がDCP制作及びマスタリング作業で1番多く利用していたのが、easyDCPです。
操作が簡単で、シンプルな構成のアプリケーション群になっているので、誰かに引き継いでいく時にもスゴく便利でした。
是非、利用してみてください。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。