映像業界や広告関連の仕事をしていると必ず出てくるキーワードにDCP(デジタルシネマパッケージ)が出てきます。
今回も、映像業界で映画関連の業務を担当したり、広告関連の業務をしていると出てくるDCP(デジタルシネマパッケージ)関連の業務関連で生じやすいアクシデントやトラブルについて紹介していきます。
DCPの制作進行でよくある事
この記事では、技術内容を掘り下げるのではなくて、制作進行側の立場に立って、DCPの取り扱いや制作信仰のポイントについて書いていきます。
インジェストって何!?
DCPのことを書くと何かと出てくるこの言葉。
インジェストとは、劇場や試写室にある。上映をするためのシネマーサーバーへデータ移動をすることです。
シネマサーバーでデータを取り込み、管理し、ものすごい高いスペックのプロジェクターによって映画コンテンツは上映されています。
インジェストは、ネットワークでの取り込み、またはCRU、外付けHDD、USBなどでデータがインポートされます。
データの取り込み後、シネマサーバーはバリデートチェックをおこないます。
バリデートチェックとは、移動したデータがコピー元データとのハッシュ(データの整合性をとるための値)と同一かどうか(ビット単位で検証をする)、DCPのデータ構造に整合性があるかなど、様々なチェックを行います。
インジェストエラーが起きた原因は?
インジェストエラーには様々な原因がありますが、概ね以下の3つに分けられます。
- DCPデータの構造がおかしい(データ)
- シネマサーバーが読み取れるフォーマットになっていない、ファイルアクセス権限がおかしい(フォーマット)
- 格納されている媒体(ハードウェア)
①の場合は、シネマサーバーは、インジェストエラーを吐き出すときはその内容や原因をメッセージで出してくれます。
②の場合は、シネマサーバーに繋げたときに認識されないなどの症状が出ます。
③の場合も②と同じような症状がでます。
DCPを納品してから起きるインジェストエラーに関する解決策のまとめ記事を作成しました。
エラーが出てしまったときには参考にしていただけれれば幸いです。
自分でLinuxフォーマットを運用できる?
少しPCに詳しい人ならこれも可能です。
USBなどで、外部からOSをブートさせる方法があります。LinuxのディストリビューションはUbuntuがいいでしょう。
コマンドラインでの操作は中々難しいのでフォーマットのソフトにはGPartedがいいでしょう。
ここで、USBやHDDを「ext」形式にフォーマットし、LAN経由で該当PCにデータをコピーして、運用に使用するLinuxフォーマットのUSBにデータをコピーします。
Linuxフォーマットにしたのに劇場で読み取れない現象が発生した!
多くの場合、Linuxフォーマットにしたときの、アクセス権限を全ユーザーが読み書きできる権限に変更しておくことが重要です。
字幕データはどうすればいい!?
ぐいっと内容が変化しましたが、字幕データは、当然ですがDCP用の字幕データを作成する必要があります。
ここで重要なのが、字幕を作成するときに、他にどのようなウィンドウで展開していくかをここで考えておく必要があります。
日本の場合は、劇場公開を経たあとにDVDなどのメディアでセル展開することが多くあります。
字幕データの再スポッティングなどは結構な費用になりますので、DVDまで販売計画に入っているときは、あらかじめその旨をDCPマスタリングするポストプロダクションに伝えましょう。
それを考慮した制作進行にしておくとコストを抑えられます。
字幕は焼き付けしかできないの?
これはたまにあるのですが、日本語字幕は焼き付けしかできないは都市伝説です。
実際には、ちゃんとSubtitle構造として、日本語字幕も含めて公開する国によって字幕データを選択し、切り替えることが可能です。
焼き付けしかできないというのは、DCPマスタリングできる会社の中には、DCP用の日本語字幕を適切に格納できるノウハウを知らない会社があります。
具体的には、日本語字幕は容量がDCI(規格)で定めた容量を大きく超してしまうからで、DCPに格納するにはフォントコンプレッション(字幕フォントデータの圧縮)という作業が必要になります。
字幕用のフォントは何でもいいの?
フォントデータ自体があれば、DCP用に加工することができますが、厳密にはDCP用途にライセンスされたフォントデータを使用しなければいけません。
DCPマスタリングをお願いする会社には、DCP用にライセンスされたフォントを字幕に使用しているか確認を行った方が良いでしょう。
劇場を横持ちするデータメディアは何がいいの?
どのUSBや外付けHDDを利用すればいいのかについて、下記2つ記事で紹介をしています。
- 劇場で使われるデジタルシネマパッケージのHDDは何を選べばいい?
- デジタルシネマパッケージ(DCP)のUSBは何を選べばいい?
最近、USBとHDDどちらで運用した方がいいのかという質問をよく受けます。
以前は厳格なCRU仕様が当たり前でしたが、私はアルミケースに脱落防止チェーンを付けたUSBで運用していました。
現在のUSBは、大容量タイプでもそれほど高くなくて転送速度も早く、場所もとらないので便利です。
USBかなり安くなりました。
そもそもUSBメモリが格納できるデータの総容量が、DCPの容量規格にある250GBを超してしまっています。
これだけUSBメモリが大容量化して値段もリーズナブルになると、DCPを回していくやりかたも、随分と変えることが出来ます。
デジタルシネマパッケージの制作業務
本記事以外にも、デジタルシネマパッケージの制作業務について記事を書きました。
コチラの記事も参考になれば幸いです。
デジタルシネマパッケージの制作業務は、原因の切り分けが難しいケースに出会うことが多いので結構苦労します。
デジタルシネマパッケージ制作(DCP制作)
筆者もデジタルシネマパッケージ(DCP)の仕事をお手伝いしています。
DCP制作ソフト
デジタルシネマパッケージを制作するためのソフトは、下記の3つを使用しています。
上記にはフリーソフトが入っていますが、この理由は、自社でデジタルシネマパッケージのマスタリングを覚えたいという場合の練習用ソフトとして使用しています。
DCP制作の価格
筆者がDCP制作を請け負う場合の価格は
- 15分以内 : 5,000円
- 30分以内 : 15,000円
- 60分以内 : 25,000円
- 90分以内 : 40,000円
- 120分前後 : 50,000円
くらいです。
現在はこれくらいの価格でないと、DCP制作の予算が厳しいと考えています。
DCPの制作環境
基本的にはeasyDCPでマスタリングを行っています。
編集環境
ADOBE CC + DaVinci Resolve
字幕ソフト
Subtitle Edit
最終的な書き出しは、カンバス社へ出力代行をお願いします。
マスタリングソフト
easyDCP+ CREATOR+ & KDM GENERATOR
完成DCPの映像チェックとバリデートチェック
DCPデータの格納
Linux CentOS環境でCRU【HDD】、またはUSBに格納します。
現在、DCP制作を事業にしていきたい企業や個人監督向けにDCPの作り方を教えつつ、案件をこなす方向でやっています。
DCPの事業については、デジタルシネマパッケージのマスタリング事業を引き継いで起業したいという方に機材ごと全てお渡ししました。
現在、筆者のスタジオではもうDCPマスタリングは行っていませんが、DCP制作をやっていた時の価格感や制作環境を紹介させていただきました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。