XRは、エクステンデッド・リアリティやクロス・リアリティと呼ばれており、(X)の部分がかからない略語ではありますが、現実の空間に何らかの情報付加をするために用いられる技術群を総称的に呼ぶときに利用されている用語です。
XR(Extended Reality)に関連して同時に利用されたり語られたりする技術として
- AR(拡張現実/Augmented Reality)
- VR(仮想現実/Virtual Reality)
- MR(複合現実/Mixed Reality)
というものがあります。
上記以外にも、SR(代替現実/Substitutional Reality)という用語があり、こちらについては、拡張現実体験を表現する中でも、if線を作り出すような仮想現実体験の1つとして利用されています。
これらの用語は、関連したコンテンツや製品、サービスに組み込まれる中で体験価値を分けて説明しにくい部分もあり、それぞれの違いや機能について理解することが難しい分野でもあります。
筆者は、この拡張現実技術の分野において15年以上の経験があり、これまで様々なコンテンツを開発したり提供をしてきました。
本記事では、これらの各技術を分かりやすく解説し、筆者の経験を基にした拡張現実事例を交えて解説していきます。
目次
XRとは何か?
XRとは、Extended Reality(拡張現実)や、Xの部分をクロス・リアリティー(cross reality)として、読みではなく形状を複合的に見立てての略称として利用される単語であり、AR(Augmented Reality)、VR(Virtual Reality)、そしてMR(Mixed Reality)を包括する概念として、総称的に扱われることが多くなった用語です。
拡張現実技術は、以前はやれることが限られていたということもあり、各拡張現実技術の理解はとてもシンプルでした。
- ARは何かのデバイスにある画面を通して現実空間に情報を付加する技術
- VRは360度を完全に囲んだ状態を作り、没入型の仮想空間を体験する技術
- MRは現実空間をデバイスが持つ追加された不可技術を用いて、現実空間に大して、より複雑な情報を付加する技術
XRは、これら全ての技術を統合して総称する意味を持ち、エンタテイメントだけではなく、多くの産業や業種で活用されています。
XRの基本概念
XRは、AR(拡張現実)を用いて現実空間に情報を付加しながら、超音波技術などを用いて表示される付加情報に触覚を持たせたり、VR(仮想現実)空間で表現されている空間の香りを付加させ、更に利用者の位置情報などを処理して現実空間と仮想現実空間を組み合わせたSR(代替現実)空間を作り出して表示したりするなど、複数の拡張現実表現技術を用いるときに利用します。
単純にカメラデバイスなどに映った空間に情報を付加する時、利用されることの多いAR(拡張現実)、完全にデジタルな仮想世界(VR)を体験したり、現実とデジタルの混在した環境(MR)を提供する技術を総称するのに便利な概念です。
最近は、視覚、聴覚、触覚などの感覚に関する付加技術を通じて複合的にユーザーに新たな体験を提供をするときによく用いられています。
XRの技術進化が進み用途も広がっている
XR技術は、ゲームやエンタテイメントから始まり、今では教育、医療、ビジネス、更に社会インフラへと、自然に応用範囲を広げていますが、ほんの十数年前は、これらの技術にビジネスとして積極的に関わっている人以外は、現実にこれらの技術が実用化され始めていることは全く知られていませんでした。
これらの拡張現実技術の進化は、2019年頃を境に、デバイスや開発環境にも大きな変化があった年で、これらの環境変化がたくさんの製品やWebサービスを含めて一気に多くの関連製品やエンタテイメント施設などが生まれました。
特に、筆者がこの分野のビジネスに関わっていて、世間一般に知られることになったニュースの1つとしては、SNSアプリで知られるfacebookの運営会社(Meta社-旧Facebook社)が社名変更をして、注力する事業としてVR(仮想現実)をメタバースとシンプルで覚えやすい呼称を付けて展開したところからと感じています。
参考リンク:「Connect 2021」カンファレンスのまとめ(2021年10月29日)|Meta Questブログ
XRの利用シーンを筆者の実例を交えて紹介
現在、XRの利用シーンは本当に幅広く、筆者がいたエンタテイメント業界だけではなく、建築から医療、教育、社会インフラにまで、多岐にわたっています。
例えば、VRを中心に使えば事前に仮想現実の中で建築物や部屋の内装を事前に見ることができます。
仮想現実で事前に確認出来たら、次のプロセスでは、例えば現地に行って建築物をARによる拡張現実で現実空間と重ね合わせ、より現実的に理解できる情報として利用者は確認することが出来ます。
その中で、問題点を見つけたり、改善点を見つけて内容を修正したり、疑問点を視覚化した状態で具体的に質問することが出来るなど、利用者とサービス提供者が解像度の高い情報を互いに共有して利用することが可能です。
例えば、筆者の場合、空中ディスプレイという、映像を空中に結像する光学部品を使ってAR(拡張現実)体験を付加し、さらに、VR環境で構成したVTuberを、その空中結像空間に投影させ、双方向コミュニケーションをとることができるシステムの開発を産学連携で開発、そして、握手などの触覚を超音波技術(ウルトラハプティクス技術)で応用して付加し、VTuberと実際にふれあっている感覚を持たせ、そのようなシステムとコンテンツを、様々なイベントで利用したりしました。
上記の技術を実際に達成するために利用したデバイス自体は、とてもシンプルです。
- 空中結像技術に必要な光学部品|空中ディスプレイ(ASKA3D)
- VTuber等の3DCGアバターを演者に装着して操作する機器|HTC VIVE
- 各機器をPCに繋いで双方向のコミュニケーションを監視するためのアプリケーション環境|Unity
- 演者が空中投影されている環境を確認出来る簡易的なカメラとサブモニター
- 空中投影されたVtuberと握手した触覚を再現する機器|超音波 ハプティクス技術
※1 上記のリンク先は、各拡張技術を実現するために必要な環境を提供する事業会社へのリンクです。
※2 上記の構成は、2018年当時の組み合わせで利用した一例です。
- 田園調布学園高等部、空中ディスプレイ用のWebコンテンツ制作講座を開始|ICTニュース
- 専門系教科研究会(工業)「講演会」 SF映画の世界が現実に 最先端のデバイス技術|東京私学教育研究所
- その他のXR系拡張現実技術開発実績の紹介 小林 玲王奈|LinkedIn
AR(拡張現実)とは何か?
AR(拡張現実)は、現実世界にデジタルの情報要素を付加する技術です。
最近は、スマホのカメラを通じて拡張現実を用いて顔にメイクをするなど、映っている被写体にエフェクト効果を付けたり、この他にも、ソシャゲでAR(拡張現実)を用いたアプリゲームがとても多くなりました。
現在、ARを活用したアプリ開発やWebサービスは簡単に開発できるようになっていて、スマートフォンやスマートグラスを通じて、現実世界に情報を重ね合わせることで、様々な表現や体験を提供出来るようになっています。
今後は、スマートフォン(スマホ)とBluetooth(ブルートゥース)を繋いで、スマートグラスを通じて様々な情報付加を行うWEbサービスが、ますます出てくると考えています。
ARの定義と仕組み
ARは、何らかの媒体を通して現実の空間にテキスト情報や画像、動画などを重ね合わせて表示する技術です。
これにより、利用者は現実世界を通して、そのままの現実世界にデジタル情報を重ね合わせて情報取得をすることなどが体験できます。
ARの用途と事例
ARも様々な分野で活用されています。
例えば、最近の事例で多いのは、衣服などの商品を試着したり、家具を実際の部屋に配置したりするための技術として、ARが用いられます。
例えば、筆者の実例として、現実空間上に空中に結像した映像を投影して操作する空中ディスプレイ向けコンテンツ等があり、これらをWebサイト制作の作り方と合わせて体験してもらいました。
参考リンク:田園調布学園の学園ブログ|「実践Webディレクション! ~空中ディスプレイ~」高1コア「探究」
ARの最新技術と将来性
今後、AR(拡張技術)よる活用シーンは多くの分野で見かけることが多くなります。
特に、スマートフォンとスマートグラスの組み合わせによる何らかのアプリケーションや、サービスが数多く出てきます。
また、デバイスの進歩によってはスマートグラスのみで、多くの機能を実装して日々の生活を支援する製品などが出てきます。
VR(仮想現実)とは何か?
VR(仮想現実)は、360度全ての視界を仮想現実で囲む、完全没入型の仮想空間で提供されることが多い技術です。
VR技術で利用されるデバイスは、まだ価格面やデバイスの大きさ、360度の仮想現実空間を表示する才の解像度など、まだ若干の課題はありますが、もう、それほど長い時間を掛けることなく、軽量で装着しやすいデバイスが数多く出てくることになる技術です。
実際に、筆者の場合は360度カメラで高解像度の自然風景撮影などを行ったりしていました。
また、必ずしも利用者がHMD(Head Mounted Display:ヘッドマウントディスプレイ)を付ける必要はなく、スマホアプリやPCブラウザでVR(仮想現実空間)を気軽に楽しむことなども出来ます。
関連記事:メタバース空間に会議室を作ってみた実例を紹介【体験用アバターも用意してみました】
最近では、人が演じるVtuberや、AIで生成された3DCGアバターによる完全自走のAI VTuberなどが出てきて楽しめるようになっています。
下記のアプリを用いれば、加増現実空間をスマホやPCブラウザで楽しめる環境を簡単に入手できます。
- ライブ配信アプリのREALITY(リアリティ)を始める方法と配信収入を稼ぐ方法を解説
- ライブ配信アプリのIRIAMを始める方法と配信収入を稼ぐ方法を解説
- AI VTuberの始め方や作り方を解説しつつ検証を進めていく
VRの定義と仕組み
VRは仮想現実です。
なので、用途を限定して、何かデバイスを付けて完全没入型の仮想現実環境を構築する仕組みも作れますし、主にPCブラウザやスマホを利用して、アプリやWebサービスを通じて仮想現実空間を作る事もできます。
VRの用途と事例
VRは最初、ゲームやエンターテイメント分野での広がりが多かった印象です。
しかし、今では訓練、教育、デザイン、これ以外にも社会システムの多くの分野で活用され始めています。
例えば、何かの作業や訓練を行う前の事前準備としてプログラムされた仮想現実環境を作り出したりなど、事例自体は検索で「用途+VR」といれれば、大体、すぐに出てくるほどになりました。
VRの最新技術と将来性
VR技術は、利用者の位置情報や姿勢が分かるように、センサー技術も発達しています。
そのため、現実の空間と仮想現実空間を完全に置き換えて体験してもらうことも出来るようになり、XRのなかでも複合的に様々な拡張現実技術を組み合わせた利用が次々と出てきています。
また、部屋の中で仮想現実空間内を、実際の歩行運動をしながら広い世界を動き回ることも出来るように、Introducing Omni Oneなどのデバイスも出てきています。
この辺りは、2018年に日本でも公開された映画のレディ・プレイヤー1を観るとイメージしやすいです。
この映画のような世界が現実に体験出来るようになっているのが今の現状です。
筆者は外に出ないタイプなので、とても素敵な時代になりました。
MR(複合現実)とは何か?
MR(複合現実)は、利用者から見える表示結果としてはAR(拡張現実)と似ている部分が多くあります。
これは、MR(複合現実)デバイスとしてマイクロソフトからHoloLensがリリースされ、それがMR(複合現実:Mixed Reality)として強調されたことも関係しています。
ただ、実際にMR(複合現実)強調しているMR(複合現実)デバイスは、高度なセンシング技術や多くのセンサー技術が複合的に組み合わさっており、AR(拡張現実)技術を用いた、一般的なアプリケーションよりもかなりの精度で、正確に空間を把握してデジタル情報の付加(テキストや画像、動画など)します。
筆者の場合、一時はずっとHoloLensを付けっぱなしにして生活してみるなど、かなりの検証を行った時期もありました。
具体的には
- MR(複合現実)用に3DCGデータとコミュニケーション学習データを組み合わせたAIアバターと暮らす
- MR(複合現実)用の3DCGペットと暮らす
- MR(複合現実)用のROOMで複数人のVtuberと遊ぶ
検証では、この辺りのエンタテイメント寄りの開発を行っていました。
MRの定義と仕組み
MR(複合現実)の定義を、ARと明確に分けるのであれば、それはセンサー技術による現実空間との座標一致をベースにした高度な拡張現実機能を提供できる部分です。
MR(複合現実)は、リアルタイムに現実空間と拡張空間を密接に、リアルタイムに繋いで行動や情報の付加を行う事ができ、それが相互同時に作用する仕組みが特徴的です。
MRの用途と事例
MRは、建築、医療、製造業などの分野で多く使用されています。
実際に、マイクロソフトのHoloLensのWebサイトを見ると、そのイメージが強く強調されています。
しかし、これらの高度なセンサー技術を持ったデバイスは、より軽量化され、価格も安くなっていくので、コンシューマー向けに、よりエンタメ性の高い分野でも広がることを期待しています。
XR、AR、VR、MRの違いとは?
XRは総称として利用され、AR、VR、MRは、それぞれが異なる体験を提供する機能や体験像を主体に、今後もしばらくは分けて使われていくと考えています。
ただし、提供されるサービスとしては、五感を使った様々な拡張現実機能で構成されて製品やサービスが提供されていきます。
XR、AR、VR、MRの比較について
上記の事から、それぞれの現実拡張表現を比較していくのは、これからは、だんだんとその垣根は見え難くなってくるのが現実です。
一例として、スマホと繋いだAR(拡張現実)スマートグラスも、何か機構を1つ付けてスイッチの様に切り替えると、没入型のスマートグラスへ変化させることも可能です。
そして、スマートグラスが持つセンサー技術が、実際の現実空間と同じ座標や姿勢で一致する機能を提供できれば、本記事の1番最初に触れたSR(代替現実/Substitutional Reality)になります。
つまり、1つのデバイスでもこれだけのことが可能になっているので、各拡張現実表現の比較をするよりも、どう組み合わせて付加価値を提供していくかを設計していくことが増えてくると考えています。
現実空間へ付加される拡張現実情報を簡単に取得できる時代
XR、AR、VR、MR等の技術は、私たちの生活や仕事の方法に革新をもたらす力を持っており、すでにそれらを社会システムの中でも見かけるようになっています。
これらの技術は今後も進化し続け、教育、医療、ビジネス、エンタテイメントなど、多くの分野で応用されていきます。
これらの技術の進化と影響
現在はAI生成によるコンテンツが話題になっていますが、これらと合わせてデバイスの進化や開発環境の進化によって、技術が組み合わさっていき、想像もしないような新しい体験が作られていくと考えています。
これらの技術が進化することで、様々な情報を得る方法や学ぶ方法、そしてコミュニケーションの方法も大きくかわってしまうでしょう。
そして、今はまだ賛否両論ある部分についても、技術の進歩と価値感の変化によって変わっていき、より一層、拡張現実や複合現実の世界が当たり前になる時代になります。
これらのテクノロジーは、各々、まだ進化している途中です。
とはいえ、これらの色々な拡張現実技術を体験できるように、メタバースプラットフォームで利用できるVRM形式の3DCGデータを無料で配布して、オリジナルアバターでメタバース体験ができるようにしてみました。
関連記事:メタバースで使えるVRM形式のアバターを無料で配布しています
最近は1ヵ月ごとに、大きく市場に影響するテクノロジーが生まれているので追いかけるのは大変ですが、引き続き、実績を積みながらこのような情報を提供できればと考えております。
最後まで読んでいただきありがとうございました。