最近はDCP(デジタルシネマパッケージ)のマスタリングを行う事が可能な会社や個人が増えました。
筆者は、デジタルシネマパッケージ事業を立ち上げたい会社や映像クリエイターに、DCPマスタリングの環境構築やマスタリングのノウハウを提供しています。
劇場にDCPを納品して、シネマサーバーにインジェストした時にエラーが出てしまい、サーバーに取り込めないという相談を受けることもあります。
DCPのデータを取り込む方法についても、以前に比べたら多様な方法があるのでだいぶ便利にはなりましたが、まだ劇場への納品はHDD/USBが多いです。
本記事では、劇場へ納品したときにインジェストエラーが出た場合の原因とその解決方法について解説します。
インジェストエラーの原因
劇場へ納品したときにインジェストエラーが出る原因は、おもに3つに分けることができます。
- データを格納しているハードの問題
- データフォーマットの問題
- データ自体の問題
KDMについては、納品前に渡すサーとファイルさえ間違えなければいいだけなので今回はKDMにはふれません。
データを格納しているハードの問題
DCPを格納するHDDの理想は
- CRUケース付きHDD
- ACアダプタ付きの外付けHDD
- USB
ポータブルのUSB給電タイプは避ける
です。ポータブルのUSB給電タイプはインジェストできる場合もありますが避けた方がいいです。
SATAケーブルの添付で納品しない
また、HDDをカバー無しで納品して別途SATAのケーブルを添付している場合がありますが、これもトラブルの原因になりますので避けましょう。
納品前にHDDのヘルスチェックを行う
劇場へ納品をする前に、HDDのヘルスチェックをしてHDDにハード的な問題がないか必ずチェックをしましょう。
たまにあるのが、HDDを使い回している内にひどくHDDに物理障害が発生している場合です。
データフォーマットの問題
ハード的な要因が考えられない場合、次はHDD内のフォーマットを確認する手順になります。
Permission設定(権限設定)の間違い
インジェストエラーが出る原因としてよくあるのが、Permission設定(権限設定)の間違いです。
読み取りや実行権限が全てのユーザーに許可されていない場合があります。
DCPは、予告編でなければ本編はLinux環境(ext2、ext3かext4)でフォーマットをしているはずです。
DCPをマスタリングした会社に権限の設定に間違いがないか確認をしてもらいましょう。
DCPのマスタリングでデータ移行によく使うLunuxのディストリビューションとアプリケーションは
- Ubuntu(ディストリビューション)
- GParted(ディスクフォーマットアプリケーション)
の二つです。
ディスクフォーマットの間違い
これは、DCPマスタリングを始めたばかりの人にお願いをした時の事例であった問題なので載せておきます。
DCPのデータをNTFSやMacのディスクフォーマットで納品されていた事例がありました…。
Linux環境で適切なディスクフォーマットに変換してから、DCPデータを格納してもらいましょう。
データ自体の問題
データ自体に問題がある場合です。ほとんどはDCPマスタリングをする時の基本的なQCチェックが行われていれば気づく問題ですが、納期が切迫している時に飛ばされやすい部分になります。
データ複製時のエラー
使用しているPCのインターフェイス、使用しているHDDのインターフェイスなどの原因で、複製したファイル自体に一見問題はなさそうでも、データのハッシュ値を調べると異なった数字の結果が出ることがあります。
DCPのマスタリングをお願いしている会社に、複製前のDCPデータと、複製後のHDD内にあるデータのハッシュ値に違いが出ていないか確認をしてもらいましょう。
ハッシュ値を調べるためのソフトはたくさん出ています。(HashMyFiles)
DCP内のPKLハッシュ値などを手動で変更する
1回出会った事例なのですが、本編データに変更があり、時間が無くて本編データのハッシュをPKLに手動で変更した事例がありました。
手動でハッシュ関連の値を変更させてインジェストを無理くり通すやり方はあるのですが、基本的には修正があったら再パッケージが基本です。
バリデートチェックをおこなっていない
DCPは、無料のソフトでも作成することが可能です。予告編などは、無料のソフトで映像ソフト会社でDCPを進行している人が簡単に作れるくらいにまで環境が整えられています。
しかし、本編は基本的にバリデートチェックはしておいた方がいいです。
マスタリング行程で、本編データにいろいろ加工をしていくと規格にそぐわない仕様になることは多いです。
本編データのDCPマスタリングは、バリデートチェックをおこなってもらうことをお薦めします。
手軽にバリデートチェック環境を整えるのであればeasyDCP Plusを推奨します。
インジェストエラーついて
本記事で紹介した以外のエラーは、シネマサーバーへのインジェスト時にエラー内容表記で具体的なエラー内容が表示されます。
インジェストエラーが起きた際には、どのようなエラーが出たのかを正確に知るために、エラー情報をもらうようにして、DCPマスタリングをおこなった会社に送付できるようにしましょう。
インジェストエラーが起きるとかなりびっくりしますが、たいていの場合は上記の内容になってきます。
また、ハード自体のエラーに関しては、HDDの梱包状態のよっては問題が起きる確率が高くなるので、しっかりとCRUで使用するような堅牢なBOXを使用することを推奨します。
なので、物理的な障害が起きにくいSSDやUSBでDCPの本編納品をするようにしています。
DCP(デジタルシネマパッケージ)の情報まとめ
DCP関連の内容をまとめた記事を作成しました。
こちらの記事を読んでいただければ、デジタルシネマパッケージに関する様々な情報が確認できます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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