デジタルシネマパッケージ(DCP)とは、フィルム上映に替わり世界中の映画館で利用されているデジタルデータで構成された映画の上映方式です。
Digital Cinema InitiativesとSMPTEによって仕様が定められており、デジタルシネマの運用基準として広められているフォーマットです。
デジタルシネマパッケージ(DCP)に関する日本語の情報は、あまり多くありません。
私は、ゼロからデジタルシネマパッケージの事業を立ち上げて年間100本以上のデジタルシネマパッケージを作成する事業まで成長させました。
最初は高価なマスタリング設備を整えることができなかったので、予告編DCPの作成から始まり、自作の物から、プロ用機器まで含めて数多くのDCPマスタリングソフトを経験してきました。
映像業界にいる方々へ、少しでもDCPに関する情報を届けて、お役に立てれば幸いです。
デジタルシネマパッケージとは
デジタルシネマパッケージは様々な映像、音声、画像、テキストのデータを複雑に組み合わせて作成されます。
仕様や構造が複雑な面があり、とっつきにくい分野ではありますが、デジタルシネマパッケージについての基本的なことを書いていきます。
【DCP】デジタルシネマパッケージって何?
デジタルシネマパッケージは複雑なデータ構造になっていますが、各ファイルの機能は明確に定義されています。
デジタルシネマパッケージの基本的な情報については、以下の記事で解説していますのでこちらの記事をご覧ください。
デジタルシネマパッケージの基本構造
デジタルシネマパッケージは、とても複雑な構造で構成されています。
しかし、データの機能をひとつひとつ紐解いていくことで、なぜそのデータがあるのかを理解することができます。
デジタルシネマパッケージ(DCP)は、基本的に以下のデータで構成されています。
- ASSETMAP.xml
- VOLINDEX.xml
- CPL.xml(Composition Play List)
- PKL.xml (Packing List)
- (Picture).mxf
- (Audio).mxf
- その他の様々なファイル、Subtitle.xmlやKDMなど
以下の記事で、それぞれのファイルについて解説しています。
デジタルシネマパッケージはどんなソフトで作られているの?
現在デジタルシネマパッケージは、無償で公開されているソフトから高価なソフトまで幅広く展開されています。
バンドル版なども充実してきており、以前に比べるとかなり身近に制作することが可能になりました。
下記の記事では
- OpenDCP
- DCP-o-matic
- easyDCP
- CLIPSTER
ついて解説しています。
その中でも、DCP作成においてよく使われているeasyDCPについては、導入コストを軽減できるeasyDCPの従量課金型モデルを紹介しています。
ソフト使用量をDCP1本ごとで支払うことができるので、DCPマスタリング設備としての大きな投資を行わずにDCP作成が可能になります。
DCPマスタリング後も一定期間の編集や修正もライセンスとして付属しているため、後から追加料金がかかるという事もありません。
easyDCPは、とてもシンプルな操作でDCPマスタリングが可能なため、easyDCPパブリッシャーライセンスは有効活用することが出来ます。
また、これまでの経験として、無料版でまず自分でデジタルシネマパッケージを作成して覚えるならOpenDCPがお薦めです。
作業の流れを覚えてしまえば、予告編などのDCPは自分で作成することも可能です。
予告編などの短いデータの場合、Linuxのフォーマットを用いずに劇場へ納品することが可能です。
この場合、劇場に納品するために使用するUSBやHDDは、FAT32形式でフォーマットをしてください。
FAT32とは
広く読み込み/書き込みが可能な汎用ファイルフォーマットのことです。
WinでもMACでもLinuxでもフォーマットが可能な便利なファイルフォーマット形式
※1ファイルの大きさは4GBまでなので注意
DCPネームを理解する
映像作品に必ずタイトルや品番があるように、デジタルシネマパッケージには重要な「DCPネーム」という物があります。
DCPはKDMという、指定された映写機や編集環境でないとデータが再生出来ないようになっています。
DCPネームをしっかり入れておかないと、映写時にそのデータがどんなデータ構成のDCPなのかをオペレーションすることが出来ません。
上映仕様に沿ったDCPネームを設定しましょう。
繰り返しになりますが、デジタルシネマパッケージは、KDMという容易に中身をみられないようにする技術があり、そのためにオペレーション時には、DCPネームによって中身や仕様を判断する必要があるので重要な情報になります。
業務で役立つ制作進行情報
映像コンテンツの発売/販売会社や映画の配給/宣伝を事業にしている会社に入ると、必ずデジタルシネマパッケージの制作進行に関わっていくことになります。
最近では、様々な企業が劇場で幕間に再生されるコマーシャル用媒体として利用することもあり、デジタルシネマパッケージに関わる人が増えています。
制作業務のQ&A
デジタルシネマパッケージの制作や進行手配で生じる疑問やトラブルの解決方法などの記事は、下記の記事で更新してるので参考になれば幸いです。
DCPの制作進行でよくあること
デジタルシネマパッケージは2016年頃から、大手スタジオだけでなく中小スタジオでもマスタリングできるようになりました。
手軽にデジタルシネマパッケージが作成できるようになった分、それぞれのマスタリングスタジオのやり方が出てきて、マスタリングをお願いすると、他では聞かれなかった質問が出てくるなど、その内容が多岐に渡るようになりました。
DCPの納品時によくあること
デジタルシネマパッケージのマスタリングサービスを始める会社が多くなってきてから起きるトラブルについて解説しています。
DCPを納品してインジェストエラーが起きた場合
劇場にDCPを納品すると、劇場側でDCPデータを上映するためにシネマサーバーに取り込む作業をおこないます。
この時に起こるインジェストエラーについて、原因と対策について解説しています。
マスタリングデータを格納する大事なUSBやHDDの選定
デジタルシネマパッケージに変換されたマスタリングデータを格納するために、どのようなHDDやUSBを選べばいいのかについては、以下の記事で解説していますのでご覧ください。
USBの場合
デジタルシネマパッケージのデータをUSBに格納する場合の記事を作成しました。
HDDの場合
HDDで運用する場合の記事は下記になります。
SSDでの運用もあり
HDDの運用で物理的な障害トラブルによくあう方は、SSDでの運用も検討しましょう。
最近はUSBの容量も大きくなり、価格もかなり安くなったので、筆者もDCPを納品するときはUSBやSSDを利用しています。
デジタルシネマパッケージを自分で作成する
デジタルシネマパッケージは、無料のDCPマスタリングツールを用いて個人でも劇場上映用のデータを作成して納品することが可能になっています。
デジタルシネマパッケージの制作料金は、スタジオにお願いする場合は予告編レベルでもあまり安く作ることはできません。
また、予告編の場合はその種類も多くなるため、多くの費用がかかることがあります。
DCPの予告編が自分で作れるようになると、本編データの制作の際にとても役立つ経験と知識になります。
デジタルシネマパッケージ制作の概要
個人でデジタルシネマパッケージを作るための基本情報は、こちらの記事で解説していますのでご覧ください。
OpenDCPを利用したデジタルシネマパッケージ制作
自分でデジタルシネマパッケージを作成し、再生確認までを行う一連の流れを経験することでDCPマスタリングを習得することが可能です。
詳しくは【DCP】デジタルシネマパッケージを自分で作成「OpenDCP編」をご覧いただきチャレンジしてみてください。
デジタルシネマパッケージに字幕を付ける
映画は字幕制作をしなければならないことが多くあります。
DCPの字幕表示は、映像そのものに字幕を貼り付ける方法もありますが、別レイヤーとして運用することも可能です。
字幕の制作環境については、上記の記事をご覧ください。
DCP制作が出来るポストプロダクション
個人でもDCP作成が出来る用になってきているため、以前に比べるとDCP制作が出来るポストプロダクションやクリエイターは多く増えています。
ただ、実際のDCP制作は営業窓口としてDCP作成の案件を受けて、実際はアウトソーシングしている会社も多くあります。
今回紹介するポストプロダクションは、以下3つの機能を有しているものに厳選しています。
- カラーグレーディング環境を有している
- MA環境を有している
- 自社に試写環境がある
カラーグレーディング、MA及び、自社で試写室を有していて、自社内でDCPマスタリングを行っているポストプロダクションです。
DCPマスタリング料金は、昨今多くのWebサイトで表示されている価格よりも高くなりますが、しっかりとした色管理、試写環境で実際に上映された時の条件に近い形で再生できる設備が整っています。
また、本格的な環境を知ることによって、自分でデジタルシネマパッケージを作る際の参考にもなります。
DCPで生成される多くのデータは、劇場公開後に様々なメディア媒体の元になる重要なアーカイブデータにもなります。
作品を展開していく計画内容によって検討していただければ幸いです。
まとめ|これからのデジタルシネマパッケージ
デジタルシネマパッケージのことが分かると、作品が公開される一番最初のウィンドウで利用されるデータを、どのように運用していけばいいのか安心して業務が進められます。
ここで作成されるデータは、その後に使用される様々なチャンネル運用にも使えるマスターとなるため、他の展開で利用するメディアの技術情報も学んでいくと効率よく販売展開ができるようになります。
また、最初はDPXというものすごく思い画像の連番ファイルをエンコードしたり、複雑なカラーマネジメントをしなければいけなかったり、マスタリングまでの工程がとても複雑な物でした。
現在は、ProResファイルやH.264ファイル、各編集ソフトで取り扱いを効率化できる独自コーデックから直に書き出しも可能になっています。
特にeasyDCP bundleはすごい便利です。
便利なDCPプレイヤー
少し予算が許すのであれば、長く、多くのDCPを扱うことを前提に考えると「easyDCP PLAYER+」だけでも導入すると便利です。
- DCPで取り寄せたデータを事前に視聴して確認できる
- バリデートチェックができる。(劇場でインジェストエラーにならないようにするため)
- 様々なファイルのエクスポートができる
特に視聴検査にかかるコストは、積み重ねると自社内、または部署内に「easyDCP PLAYER+」を用意した方が費用がかなり縮小できます。
DCPプレイヤーシステムの構成
「easyDCP PLAYER+」で視聴できる環境を構築するのは、以前に比べたら膨大な投資コストがかかるというようなことはなくなりました。
- LinuxPC(DCP受け入れ用)にDCPのデータをコピーする
- LAN経由でLinuxPCからeasyDCP PLAYER+がインストールされたPCへ
・視聴確認
・バリデートチェック
・翻訳用データなどの書き出し
IMF(Interoperable Master Format)への対応
最近は映像のマスターフォーマットとしてIMF(Interoperable Master Format)で進行する機会が出てきています。
IMFは、DCPと構造が似ているフォーマットです。
IMFは、配信系会社にそのまま納品できたり、ファイルのタグでアーカイブ用途にすることにもできる便利なフォーマットです。
「easyDCP PLAYER+」は、他に比べてそれほど高い価格でもなく、デジタルシネマパッケージ(DCP)とIMF(Interoperable Mastering Format)両方のフォーマットを取り扱うことができます。
これからも引き続き、記事を更新しています。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
デジタルシネマパッケージなどの技術情報を共有する
現在でも、DCP(デジタルシネマパッケージ)のマスタリングやIMF(Interoperable Mastering Format)のパッケージングに関するノウハウ情報は、まだまだ多いとは言えません。
特に、技術情報は共有されにくい分野が多いので、もっと情報が公開されて共有されていけば活発な市場成長を作り出すことが可能になります。
体験を通じた技術情報は、とても貴重で多くの人たちによって役立つ情報になります。
是非、Webサイトをブログ型のサイトにして運用して、より一層、DCP(デジタルシネマパッケージ)のマスタリングやIMF(Interoperable Mastering Format)の情報が増えていくようにしていきましょう。