筆者は放送/映画/映像業界で15年以上、テクニカルな部分も含めて多くの事業や作品に関わってきました。
映像業界にいた頃は、長尺の映像データ(映画を編集する場合は、実尺時間の何十倍以上の動画データを扱います。)を扱うことが多く、作品によってはPB(ペタバイトは1,000TB)近い情報量を扱う事もしてきました。
起業して2020年01月に法人化してからは、Webメディア(サービスサイトやブログサイト)が中心の事業になっているので、当時に比べたら考えられないほどの小さな容量データを扱うことがほとんどになりましたが、データの保存(アーカイブ・バックアップ)などは常に情報管理の1つとして大事なプロセスです。
本記事では、データの保存・バックアップ方法について解説していきたいと思います。
- データの保存メディアの事が分かる
- どのようなデータをどの保存メディアに収めれば良いか分かる
- データの保存先がクラウドストレージ(オンラインストレージ)の場合はどれが良いか分かる
それでは、データが保存出来る様々な保存メディアを紹介していきます。
目次
データの保存はデータ容量の大きさや種類で保存方法が決まる
筆者の場合、映像データを扱うときは1ファイルで1TB(DVD1層:1枚で約250枚分相当)の大容量データなどを扱うことが多く、また、1作品当たりで使用する映像音声データの総容量は合計で1PB(DVD1層:1枚で約250,000枚分相当)になる事もありました。
実際には、そのような映像データをそのまま扱うのではなくて、圧縮して要領を軽くした「プロキシファイル」という編集用の仮ファイルを作成して、書き出しの時だけ容量の大きい映像品質の高いデータを利用するという方法を用いたりします。
ただ、これは長尺の映像作品を扱う場合の一例なので、本記事ではラップトップやスマホに溜まってしまったデータを一時的に移動したり保存する場合を想定して書いていきたいと思います。
保存するファイルの種類
保存するファイルは必ず
- テキスト
- 画像
- 映像
- 音声
のどれかに該当すると考えます。
実際問題として、上記4種類のデータの内、「特定のファイルの種類を使う事が多く、それだけ保存が必要」という状況は少ないと思います。
個人で利用するスマホでも、機能としてメモ(テキスト)、カメラ(静止画像、動画)、マイク(音声)によるファイルが出来上がるので、実際には上記4種類のファイルやデータ全体を、どのメディアに保存していけば良いかと言うことになると考えます。
保存できるメディアの種類には何があるのか?
保存できるメディアの種類についてですが、歴史のどこからを辿るかで随分と内容が変わってしまうので、本記事では執筆時点(2022年9月1日)で、よく使われている保存メディア、これからシェアを広げてくる可能性がある保存方法を中心に紹介したいと思います。
各メディアの特徴や利用時のメリット・デメリットについては後述しますが、現在は下記のようなクラウドストレージサービスを含めた保存メディアやサービスがあります。
- HDD『Hard Disk Drive – ハードディスクドライブ』
- SSD『Solid State Drive – ソリッドステートドライブ』
- USBメモリスティックやSDカード
- LTOなどのテープメディア(2000年頃は、DLTなどたくさんの保管向けテープメディアがありました…)
- DVDやBlu-ray、ODAなどのシステムや次世代HVDなどの光ディスク
- クラウドストレージ(オンラインストレージ)
などがあります。
細かく分類していくとものすごい種類になるのでざっくりとした感じにはなりますが、データの保存方法として上記の6種類のなかからデータの保存方法や運用方法などを定めて保存していると考えます。
主に映像編集用などの大容量データを扱う場合
事業として、大容量の映像を扱う場合、状況によってはRAID技術を用いた数百TBクラスのHDDを組み合わせた大容量ハードウェアで保存したり、1つの大容量HDDに映像を収めたりすることもあると考えます。
これはもう本当に業務用なので、費用も、小中規模と言えども数百万円〜数千万円掛かるような予算規模になります。
筆者も起業してから始めの頃は、劇場上映用データのDCP(digital cinema package – デジタルシネマパッケージ)を扱っていたので、情報漏洩しないような施設や仕組みも含めて本当はそれくらいの予算を掛けてデータの保存をしなければいけなかったのですが、結果的に設備投資をして採算がとれるか考えた時に、筆者の会社ではその事業だけに集中することが出来ないので難しいと考え、自社での事業継続は断念しました。
主にアプリ開発などのデータ扱う場合
これも開発規模によって、まるっきりプラットフォームの環境が変わってしまいます。
データの保存やアーカイブシステムも、開発段階から設計する場合もあるし、筆者が開発しているWebサービスの一例では、サービス運用のデータとは別に、単にビジネス用のクラウドストレージサービスで、ソースとなるプログラムをアーカイブしているだけになっているものもあります。
主にWebサイトのデータを扱う場合
これについても、どれくらいの規模のWebサイトを運営しているかによって、先ほど少し紹介した、コンテンツの種類ごとに管理している場合や、Webサイトのデータバックアップと、それに紐付いたテキストコンテンツ、画像及び動画や音声コンテンツをまとめてクラウドストレージ(オンラインストレージ)サービスに保存している場合など、多くの保存方法があります。
筆者自身はどうやってデータの保存をしているのか?
ここからは、筆者が行っているデータ保存について紹介して行きたいと思います。
- 筆者の会社の規模は小規模事業者
- すでに映画などの非圧縮大容量コンテンツを扱う事業は自社で行っていない
- Webサービスやブログサイト等の自社運営で扱うデータはそれほど大きくない
当初は、小規模でもデータアーカイブエリアを含めて、映像加工スタジオやライブ配信スタジオの設営を予定していたのですが、色々と環境が代わり、Webメディアのほうに注力した背景があるので、そこを前提に紹介していきます。
HDD『ハードディスクドライブ』を扱う場合
HDDのメリットは、収められる要領がスゴく大きいので、一時的に大容量データを保管したりなどの必要性があるときに使っていました。
先ほど紹介したように、現在は厳重な管理が必要なコンテンツを扱っていないので利用していません。
保存やアーカイブについても、その機構上、長期間の間、雑多に保管していたりすると、経験上あまり良くないことが起こったりするので、保管においては得策とは言えないところです。
もう少し細かく分類すると、NASという、ルータやハブから分岐させてLAN上からデータの保管などを出来るようにしたり等もあるのですが、プライベートの思い出動画や画像ならともかく、外部から預かっているコンテンツだと漏洩リスクやセキュリティをコントロールできないと危険なので、現在は利用していません。
SSD『ソリッドステートドライブ』を使う場合
こちらについても、納品コンテンツに指定がない限りはHDDではなくコチラを使うこともありましたが、最近は利用することが無くなりました。
最近は保存できるデータ容量も大きくなり、転送速度も速いので、インターフェイス(差し込み口)によってはものすごい早さでデータ転送が可能です。
とはいえ、SSDもHDDと同じくその機構上、保管環境をしっかり行わないと、データの保管が良好に出来るとは言えません。
USBメモリスティックやSDカードを使う場合
USBメモリスティックやSDカード類も、大容量化が進んで値段もかなり安くなったので、一時的なデータの移動に使うこともありました。
現在は、VPN経由でWebサービスやクラウドサービスを利用するようにしているので、こちらについても全く利用しなくなってしまいました。
ビジネスパートナーを含めて、全員リモートワークになり、物理メディアの紛失による情報漏洩リスク等を考えると、どうしてもクラウドストレージを利用してのデータ運用になっていってしまった感じです。
LTOなどのテープメディアの場合
個人的には、データ保管用のメディアがテープメディアだとホッとする感はあるのですが、実際問題として
- テープを読み取るドライブが高価であること
- テープメンテナンスが必要な事
- テープの世代によって世代移管が大変
ということがあります。
また、読み書きドライブが高価なうえに、ドライブの世代管理等、ラベル管理含めて諸々の管理ノウハウが必要です。
なので、筆者の会社ではデータ保管でLTOメディアを使用する事は現状ないと考えています。
DVDやBlu-rayなどの光ディスク
現状、光ディスク用の外付けドライブを利用して定期的にデータを保存していますが、今後は後述するクラウドストレージサービスのみのデータ保管になります。
機器とメディアを繋ぐインターフェイス(コネクタ)が煩わしくなってしまう
ここまで紹介したデータの保存メディアは、少し前までスゴくお世話になっていたのですが、大容量データを預かったり、編集したりすることが無くなったので、そもそもの大容量保存メディアが必要なくなってしまったというところにあります。
また、それぞれのメディアは、その時に利用する機器と繋ぐためのインターフェイス(コネクタ)が別だったりしたために、煩わしくなってしまったというのが正直なところです。
現状は、容量が大きい単一のデータを扱うことが無いため、クラウドストレージ等を利用するのが1番利便性が高い状態になっています。
現在はクラウドストレージ(オンラインストレージ)の活用で足りている
厳密には、クラウドストレージとオンラインストレージは意味が違うのですが、本記事ではまとめてクラウドストレージサービスという形で呼びます。
現状、筆者の場合は1ファイルが数TBもするようなデータを扱っていません。
現在も動画データを制作したりしますが、圧縮済みのHDサイズ動画を数分扱う程度なので、素材も含めてすべてクラウドストレージサービスで利用できる保管容量で足りている状況です。
例えば、ブログサイトの運営を例にとれば、ブログ記事などのドキュメントデータは
などが持っているエディタなどでブログ記事を書きながらリアルタイムに保存が可能です。
ブログ記事が出来上がったら、ブログ記事単位で画像なども含めてフォルダでクラウドストレージにデータを保管するイメージです。
もし、クラウドストレージサービスを利用したことが無ければ、上記で紹介した3つのサービス以外にも、Webメディアが成長して、きちんとWebサイト内で利用しているデータの管理などが必要になってきたら、無料のフリープランもあるXserverドライブなどのWebサービスもあるので、色々体験しておくことをオススメします。
思い出の動画や画像などもクラウドストレージで保管する
現在、クラウドストレージは毎月の必要がかかるものの、利用すればTB級(1,000GB以上)のストレージを簡単に利用することが可能です。
また、最近は動画の圧縮技術も発展して、2K/4K映像でも高い映像品質で高圧縮することが可能なので、それほど大きなデータ容量にはなりません。
画像データについても、スゴく大きな解像度で綺麗に撮影することが可能になりましたが、プロが扱うようなRAW画像でなければ、撮影時からJPEGという圧縮画像が生成されるので、1枚数MBから10MBくらいの容量です。
これらのスマホなどに格納されていく画像や動画、音声ファイルは、機種変更の時に機種変前の機器に格納されっぱなしになったりされてしまうこともあります。
けれど、撮影したら都度クラウドストレージにアップしておけば、自分が利用する機器環境が変わっても思い出をきちんと管理していくことが可能です。
筆者は個人的には、これからは
- 自分の独自ドメイン
- 独自ドメインからのメールアドレス
- クラウドストレージの利用
が必須の状況になっていくと考えています。
「とりあえず」感覚で、「データ保存のこれから」を色々体験してみて、Webを便利に扱っていけるようになれば良いなと考えています。